3年間の大学生活を振り返って
こんにちは、ジロウです。
今回は、3年間の学士課程を振り返って個人的に感じたスイスで大学に通うことのメリット、デメリットを共有したいと思います。
スイスの大学への留学を考えている方の参考になれば幸いです。なお、あくまで薬学部についての主観的な情報であり、学部によっては全く異なる場合もあるのでご了承ください。
メリット
①語学+専門知識が身に着く
②勉強に集中できる
③スイスでだけでなく、ヨーロッパ全体の薬事情についても知ることができる。
➃インターンシップなどを通して人脈ができる。
⑤学費が安い
一つ目のメリットとしては、外国語で薬学を学ぶため、語学と薬学の専門知識を身に着けることができます。スイスの薬学部の場合、フランス語圏であればフランス語で、ドイツ語圏であればドイツ語で授業が行われます。日常的にその言語に触れるため、間違いなく語学力は向上します。ただ、正直なところ、3年間でペラペラになるかどうかはその人がアウトプットをどれだけ行ったかによると思います。リーディングやリスニングはよく聞く鍛えられます。ライティングに関しては、2、3年生では毎週実験レポートの提出が必須であり、ペアやグループで一つのものを仕上げるため、それなりに鍛えられます。スピーキングに関しては、グループワークや実験を通して鍛えられるものの、必要最低限の発言でも問題ないため、積極的に話をするかどうかによって成長度合いが変わってきます。自分の場合、あまり積極的に話しかけるタイプではないため、思ったよりもペラペラになりませんでした。薬学に関しての専門知識は授業を通して得ることができ、薬剤師が実際に仕事で使用するツール(薬の情報を確認するためのウェブサイトなど)についても学ぶことができます。
②について、毎学期の成績は基本的にテスト一発勝負で決まるので、同級生の多くは、学期開始直後からとても勉強しています。そのため、勉強をしようという雰囲気が出来上がっていて、自分も勉強に集中しやすいです。また、学校外に娯楽がそれほど多くはないため、遊びたいという誘惑も少ないです。
③については、スイスの薬事情に加え、少しですがフランスやドイツなどの医療システムについても学ぶ機会があります。また、実験では、「スイス薬局方」や「ヨーロッパ連合薬局方」を通して自分で情報を得る機会があるため、これらの資料の使い方を実践を通して学ぶことができます。
➃については、医療業界のつながりを作る機会が豊富にあります。薬学部生を対象にした医療従事者との交流会が頻繁に開かれていますし、薬局での必須のインターンシップを通して人脈を作ることもできます(修士課程では、薬局の他に病院や製薬会社でインターンシップをすることも可能です)。将来スイスで働きたいと考えている場合には、メリットとなるでしょう。
⑤については、自分の通っている大学は州立であるため、学費が年に1000フラン(1フラン=170円だと17万円)でした。州によって多少増減しますが、だいたい似たような金額です。日本の国公立の1/3程度の金額です。ただ、生活費を含めると、日本で国公立に通うよりは全体の費用は高くなると思います。また、2つの国立大(ETH、EPFL)もこれまでの同等の学費でしたが、新たな政策で留学生の学費が3~4倍に上がる見通しです(出典:International student tuition fees at ETH and EPFL to be tripled (iamexpat.ch))。
デメリット
①語学の面で苦労する
②勉強以外の時間がとりにくい
③常にプレッシャーにさらされている
デメリットとしては、大きく3つ挙げられます。まず、語学の面で苦労します。自分の場合、グループワークで上手く議論に参加できないのが苦痛でした。また、フランス語を母国語とする生徒に比べより多くの時間を勉強に割く必要があります。というのも、読解やレポートを書くスピードが彼らよりも遅いからです。これに関しては、母国語でないので仕方ないと割り切り、時間をかけて勉強する覚悟があればそれほど苦痛ではありません。私自身、1年生の時は追加でフランス語のコースを受講したりしていましたが、2、3年次にはその時間がありませんでした。授業の理解に関していえば、使われる単語は医療系のものに限られますし、日本語で情報を探すこともできる場合が多いため、内容が分からずに苦労する、ということはほとんどありませんでした。
②に関して、特に2、3年生では月~金の8時~17時まで授業があり、平日夜と休日は復習や課題に取り組む必要があったため、自由時間はとても少なかったです。他のクラスメートを見ても、バイトをしている人はほとんどいませんでした。学期によっても忙しさに差があり、秋学期は試験前に1ヵ月のクリスマス休暇があるため、復習が遅れてもここで埋め合わせることができますが、春学期は試験前の休暇がないため、かなり忙しいです。
③に関しては、別の記事でもお伝えした通りです。2回同じ単位を落とすと退学になるので、夏休み以外は常に気が抜けません。退学になると、スイス国内の他の大学で同じ専攻を取ることができなくなります。自分の学年では、1年→2年に進級する際に生徒数は半数ほどに減りました。ストレートで学士号を修了できたのは、入学当初の生徒数からするとおそらく40%ほどだと思います。ただ、定員数が決まっている医学部とは異なり、基準となる成績以上を取れば全員進級できるので、頑張って勉強すれば大丈夫なはずです。
それ以外の特記事項としては、クラスはとても多国籍でした。フランス人や、フランス語を公用語とするアフリカ諸国出身の学生も多かったです。いろんな文化や価値観を学ぶことができる一方で、考え方の違いによりグループワークで苦労しているチームなどもいたので、多国籍というのは人によりメリットにもデメリットにも感じられると思います。
以上、私自身が3年間を通して個人的に感じたメリット、デメリットでした。
それでは!