スイスの薬局・薬剤師事情
こんにちは、出発ぎりぎりまで航空券を探し、タイミングを逃していつも高い値段で買わざるを得ない状況になっているジロウです!
さて今回は、スイスの薬局・薬剤師事情についてです。
現役薬剤師・薬学生の方々、薬学部進学を検討している高校生の皆さんの中には、「外国の薬局・薬剤師事情ってどうなの?日本とどう違うの?」と疑問に思っている方もいると思います。
ここではそんな疑問に対して、pharmaSuisseという機関が毎年出している報告書のデータに基づき、一緒に答えを見つけていきましょう!
目次
①薬剤師の役割
②薬局・薬剤師の数
①薬剤師の役割
スイスでは病院にかかる費用が高額なため、風邪など症状が軽い病気の場合は、薬局で薬剤師に相談して市販薬で治す場合が多いです。
この前友達が薬を誤飲し病院に見てもらった際には、診察(問診と心電図)だけで5万円以上かかりました。加入している保険の免責額を超えた金額は基本的には戻ってきますが、とはいえ気軽に病院に行くには敷居が高い気がします。そのため、薬局を訪れる人が多いわけです。
2021年のデータによると、国民一人当たり、病院・クリニックへは4.4回/年行くのに対し、薬局へは11.0回/年行くそうです。
スイスの薬局では、花粉症の薬や胃腸薬など、ドラッグストアで自由に手に取ることができるような薬もレジの向こう側に置かれています。つまり、薬剤師と相談したうえで購入するのです。
また、ほとんどのカントンでは薬局でのワクチン接種が認められています(インフルエンザ:25/26、新型コロナ:24/26)。
②薬局・薬剤師の数
(1)薬局数
スイス全土に薬局は1844(2021年末時点)あります。つまり、10万人当たり21.4つの薬局が存在することになります。
日本の薬局数は6万951(2020年末時点)で、10万人当たりの薬局数は全国平均で48.3です。
都道府県別にみると、薬局数1位は東京の6895、10万人当たりの薬局数1位は佐賀県の62.4です。
ヨーロッパでは、下の画像のようなミドリ十字が薬局を表しています。また、画像のようにヒュギエイアの杯(ギリシャ神話に由来する薬学のシンボル)が描かれているものもあります。
出典:Pharmacie :: Anzère :: Valais :: Suisse (anzere.ch)
(2)薬剤師数
スイスの薬局では約2万3000人(2021年末時点)の人々が働いていて、そのうち約5750人(管理薬剤師:約2150人、薬剤師:約3600人)が薬剤師です。薬剤師の他には、アシスタントと呼ばれる職種の方々や、薬学実習生などがおり、1つの薬局に平均で12.3人(薬剤師3.1人)所属しています。
スイスの薬剤師の特徴としては、外国人の薬剤師が多いことだと思います。
出典:Faits et chiffres pharmacies suisses(2022)| pharmSuisse
・ :スイス国内の大学を卒業後、薬剤師試験に合格した人数
・ :外国の薬剤師免許の認定により、スイスの薬剤師免許を手に入れた人数
上記のグラフは、新たに薬剤師の資格を取得した人数を1年ごとに表していますが、外国の免許認定による薬剤師の数が上回っていることが分かります。
これは、
①言語面で障壁が少ない
②免許の認定が比較的容易(EUおよびEFTA加盟国)
③スイス国内の大学から輩出される薬剤師の人数がそれほど多くない(毎年200人ほど)
が主な原因だと思われます。
例えば①に関して、スイスの公用語はドイツ語、フランス語、イタリア語など4つあるため、それらを母語とする人々にとっては来やすいでしょう。
実際、2021年に免許を認定された外国人薬剤師の出身国トップ3はドイツ、フランス、イタリアです。
②に関して、スイスとEU諸国およびEFTA諸国(アイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェー)の間で相互協定が結ばれており、スイス国内において、これらの国々の薬剤師免許はスイスの薬剤師免許と同等の効力を持つと定められています。このため、手続きが比較的容易です。
一方、日本の薬局には約18万9000人の薬剤師が在籍していて、ほかにも薬局事務などの方々が働いています。ドラッグストアや病院などで働く薬剤師の方々も合わせると30万人を超えるため、日本の薬剤師数は世界的にみて豊富といえます。また、日本人の薬剤師が大半を占めています。
日本に在留する外国人は年々増加しているので、今後は外国人の薬剤師も増えていくかもしれませんね。
いかがだったでしょうか。
業務や人数など細かな違いはあれ、どの国の医療でも薬剤師はなくてはならない存在だと思います。
今回の情報が少しでも読んでくれた方の参考になれば幸いです。
それでは!
参考:・Faits et chiffres pharmacies suisses(2022)| pharmSuisse
・Faits et chiffres pharmacies suisses(2021)| pharmaSuisse
・mhlw.go.jp
・令和2(2020)年医師・歯科医師・薬剤師調査の概況|厚生労働省